分散型アイデンティティ(DID)がクリプトを次のフェーズへと引き上げる。その方法は?
DIDは、人や組織、デバイスなど、誰にでも何にでも当てはめることができます。運転免許証やパスポートなどの典型的な識別子(Identifier)とは対照的に、DIDは中央集権化された登録機関、 IDプロバイダ、または認証局に依存しないように設計されています。
元記事はこちら:How Decentralized Identity Can Take Crypto to the Next Level
この1年で、分散型アイデンティティ(DID)に対する認識と関心が高まっています。DIDは、とりわけユーザーが仲介者を介さずに自分のデジタルアイデンティティを管理できるようにするものです。
各ユーザーにとってのメリットだけでなく、DIDにはシームレスでアクセス可能、かつ検証可能なエコシステムを構築する可能性があります。DIDは、DeFiをはじめとする様々な問題を解決するでしょう。
分散型アイデンティティとは?
そもそも、分散型アイデンティティ(DID)とは何を意味するのでしょうか。定義を明確にすることが重要です。
DIDは、人や組織、デバイスなど、誰にでも何にでも当てはめることができます。運転免許証やパスポートなどの典型的な識別子(Identifier)とは対照的に、DIDは中央集権化された登録機関、 IDプロバイダ、または認証局に依存しないように設計されています。
例えば、デジタルウォレットの作成に使用されるキーペアは、使用されたブロックチェーンプラットフォームによってサイロ化(独立化)されています。
一方で、DIDは各ブロックチェーンプラットフォームに依存することなく様々なチェーン上で運用することができます。検証可能な証明書(Verifiable Credentials)とともに、人々は自身のアイデンティティをより強固なバージョンとして作成することができ、大学の学位や証明書、ソーシャルメディアのアカウント、運転免許証やパスポートなどと紐づけることが可能です。実世界における証明書を一つの安全なIDのもとにリンクさせることができます。
クジラを作るのではなく、DIDをクリプトのプロトコルに組み込むことで、エコシステムに資金が均等に分配され誰もが参加できるようになります。
IDの発行者と検証者は、相互に作用することでDIDに関連する情報を発見することができます。DIDの保有者は、自分のIDとデータを完全にコントロールし、他人と共有したい情報がある場合には、共有したい情報だけを選択して共有することが可能です。
具体的には、検証されたユーザーにのみアクセスを許可する秘密鍵が入ったスマートフォン(ローカル端末)やクラウドサービスにDIDを保管しておきます。
DIDが解決する課題
現在、クリプトは主に投資的・投機的なユースケースがほとんどです。その代表的なものがDAppsであり、エコシステムへの参加具合や貢献度よりも資本を優先しています。
Plutocratic (one-token-one-vote)システムは、ほとんどのDAppsで投機的に応用されており、資本のある人にしか利益をもたらさないというネガティブサイクルを助長していると言えるでしょう。
より好ましい平等なモデルは、1人1票のユースケースを提供するエコシステムを作ることです。DIDはこの役割を果たすことができます。DIDをクリプトに統合することで、クジラを作るのではなく全ての人が参加できるようになり、資本がエコシステムの中でより均等に分配されるようになるのです。
同様に、DIDによって実現される1人1票のメカニズムは、ガバナンスへの参加をより正確に定量化するのに役立ち、資本に基づいてメンバーに投票権を与えるナンセンスなプロトコルを暴き出すことができます。
ユースケース:DeFi
DeFiの場合、DIDはエアドロップに関連するいくつかの問題を解決するでしょう。当該プロジェクトが、DIDプロトコルで認証されたユーザーにのみエアドロップするようになれば、プール全体のトークンを公正に分配できるようになります。エアドロップを受け取るには自身のDIDを認証されなければならないため、botによる流出を減らすことが可能です。
DIDプロトコルでは、ブロックチェーンに保存されたデータに基づいて、ユーザーの信用スコアやこれまでの活動を検証することができます。これにより、ユーザーは自身のアイデンティティを管理しながら、信用ベースの融資を受けることもできるでしょう。
チェーン上の行動をもとに測定するレピュテーションシステムは、レンディングにおける借り手の信用性を明らかにし、システム全体をより強固で信頼できるものに成長させます。DIDは、ユーザーに自己主権的な信用スコアを与え、それを使ってクレジットへのアクセス、借入、投資を行うことができるのです。
ユースケース:NFT
NFTの場合、DIDをNFTに導入することで、買い手と売り手がデジタルアートなどのクリエイターやコレクターを検証することができます。これにより、本質的な価値がクリエイターや二次販売時に正確に伝搬されます。
DIDは、投機目的でトークンをmintするダフ屋の代わりに、NFTを長期的にサポートする意思のあるコミュニティに渡るようになり、トークンの価格を上昇させ資本のない人々がアクセスできなくなるようにするためにも導入されるでしょう(つまり価値のないトークンは淘汰されます)。
ユースケース:DAO
DAOは、共通の目的に向かって取り組む人々のグループであり、共有の銀行口座を持っているとも言えます。
このようなグループにおいては、コミュニティのニーズやメンバーの貢献度を測るツールがないと、正確にメンバーを評価できなかったり、貢献度に応じたインセンティブを付与できなかったりします。
トークンベースのガバナンスを採用しているDAOでは、アクティブな貢献者ではないと思われる人物であっても、多くのトークンを保有していることで意見が優先され、本当にアクティブな貢献者の意見を排除してしまいます。
DIDは、コミュニティの意見をより正確に測定するガバナンスメカニズムを可能にするのです。
デジタルライフとリアルライフの境界線が曖昧になるほど、私たちのデジタルアイデンティティは成長し、複雑に進化していくでしょう。
DAOを運営するには、貢献度の高いメンバーを明らかにし、それに応じてインセンティブを与えることが重要です。DIDは、メンバーの貢献度をより明確に示すことができ、優秀な人材に適切なインセンティブを与える基盤となります。
また、DAOのメンバーが自分の役割について習熟するにつれて、DIDを使った検証可能な履歴書を作成することもできるでしょう。例えば、他のDAOに対して過去に行った自分の貢献を提示することで、DAOはメンバーの価値を事前に評価し、それに応じてインセンティブを与えることも可能です。
DIDに取り組むプロジェクト
Ontology:https://ont.io
Bright ID:https://brightid.org
Idena:https://www.idena.io/
Serto:https://www.serto.id/
Gitcoin:https://gitcoin.co/
ブロックチェーンやクリプト業界におけるDIDの盛り上がりは、今後数年間で飛躍的に成長すると思われます。デジタルライフとリアルライフの境界線が曖昧になるほど、私たちのデジタルアイデンティティは成長し、複雑に進化していくでしょう。
これらのアイデンティティが複数の集権化されたシステムに管理されている場合、自身でコントロールすることが難しくなります。この問題を解決するのが分散化であり、それが未来に与える影響は大きなものになるでしょう。